笹久保 伸 インタビュー
September 25, 2022
2022年9月24日にCAFE GATIにて「笹久保 伸」初ライブを森波実行委員会で開催しました。その翌日に30作目の「CHICHIBU」からの制作に関してのインタビューにお答えいただきました。
森波実行委員会:
30作目「CHICHIBU」の製作についてお聞きしたいのですが、今回の「CHICHIBU」ではデータのやり取りで制作されたとのことですが、共演者と同じスタジオでセッション的に制作することとの違いはありますか?
笹久保 伸:
よくセオリー的にはスタジオでセッション的に制作した方が良いものが作れると思われているところがあると思いますが、個人的にはそんなことはないと思っていて、本人にグルーブがあればそれに重ねるだけなので、それを今回証明したいと思っていました。結果的に違和感のないナチュラルなものなったと思います。あと、リモートでの制作の方が早いということもあります。2020年はコロナ禍で移動ができなかったので、必然性もありました。
森波実行委員会:
21歳から26歳までペルーで音楽を学ばれていたとのことですが、ペルー音楽とはどんな音楽なのかお聞かせください。
笹久保 伸:
サイモン&ガーファンクルの「コンドルは飛んで行く」という曲が1970年代に日本で大ヒットして、フォルクローレというワールドミュージックのジャンルが広まりました。
僕がペルー音楽をやることになったきっかけは、当時父親がJICAの職員としてペルーの病院に勤務していて、その時0歳から1歳までペルーに住んでいました。ペルーに住んでいるときに父が現地のカセットテープを買っていたんですが、日本に帰ってきてからもそのカセットテープを聴きながら育ったので自然とペルー音楽が好きになりました。もし父親がブルースやロックを聴いていたら違っていたかもしれないし、ジャマイカに行っていたらレゲエを好きになっていたかもしれないただそれだけのことなんですよね。
僕の住んでいるところは埼玉県の秩父という田舎町なんですけど、楽しいことがなくていつも音楽を聴いて練習していました。遊ぶところがあったら音楽をやらなかったと思いますけど(笑)。今となっては環境が良かったと思います。
森波実行委員会:
昨日のライブのMCで「変わっていくことに抵抗がない」と話されてましたが、最新作のMount Analogueはバンド形式での作品ですが今までとかなり違う作品になるのでしょうか?
笹久保 伸:
かなり違う作品になると思います。元々は一人でクラシックギターを弾く独奏というスタイルでやってきました。普通のクラシックも弾きますし、ジョン・ケージに代表されるクラシックの現代音楽も演奏していました。僕は色々な音楽を聴いて影響されるので根っこはありますが、変わっていくことに抵抗はないですね。逆に一つのジャンルに縛られたくないし、ジャンルの名前に埋没していくような音楽を作りたくないですよね。ミュージシャンだとそのジャンルと違うことをやると喜ばれないんじゃないかというマインドが働くんですけど、そこを捨てたいんですよね。売れてしまったらそこを期待されるので違うことができなくなっていくですけど、幸いにして売れてないので(笑)、変わっていかざるをえないですね。過去の偉人のマイルス・デイビスも最初と最後では全然違う分けじゃないですか。フュージョンぽかったり、デジタルぽかったり変わっていく方が自然なんだと思います。時代は変わるし自分も変わるし、若い子たちが聴いている音楽を聴いてかっこいいと思ったり、音楽家・クリエーターとして流行を追うということではなくてその新しい感覚に気づいていきたいですね。
Mount Analogueは今までやってきたことと全然違います。ブラジル人の若いピアニストとドラマーとアルゼンチン人でアルゼンチン音響派という音楽シーンの中心人物と1980〜90年代のフランスの前衛シーンのジョセフ・デュモランとも演奏しています。良い写真家の文章を読んでいると「被写体に左右されない写真を撮る」と言っている人がいて、自分の表現に左右されない音楽を作っていきたいですね。
森波実行委員会:
CHICHIBUからMount Analogueまでmarucoporoporoさん以外は外国人とセッションされていますが、日本人でセッションしたい人はいますか?
笹久保 伸:
楽器を演奏する人でも歌手でもトラックメーカーでもずっと探しています。今は30代後半ですけど、自分が10〜20代の時は先輩のアーティストの音楽に憧れていたんですけど、逆に若い子たちの音楽を聴くと自分では聞いたこともない本当の意味で想像できない音楽をやっていてショックを受けることもあります。30代半ばから若い子たちに学ぶことが多くなりましたが、なかなか出会うことが少ないです。それはやっぱり日本はジャンルの壁があるっていうか、クラシックギタリストがラッパーに声をかけて一緒にやるってこと感じにならないじゃないですか。そういうのがなくなったらいいなと思いますよね。むしろこの人とやった方がいいとか教えてください(笑)
取材・執筆:森波実行委員 沼田 健太郎
撮 影:森波実行委員 真田 敬弘